株価上昇の裏にこの投資家あり?Capital Research and Management

IPO市場全体

今年前半の堅調な値動きはどこへやら、一転して方向感のない展開に入った株式市場。日経平均株価は高値を抜けないどころか今年5月の水準に逆戻りマザーズ指数にいたっては、今年6月下旬の高値から20%以上下落して年初来安値を更新し、下げ止まる気配が未だうかがえません。

そんな中、ひとつのIPO案件がマーケットの注目を浴びています。それがKOKUSAI ELECTRIC(東証プライム:6525)です。

時は来た!KOKUSAI ELECTRIC(東証プライム:6525)10/25(水)上場
KOKUSAI ELECTRIC(6526)上場について、今後の需給に影響を与えるかもしれないポジティブ/ネガティブ情報をポイント4つにまとめました

10月25日(水)に上場。上場前は吸収金額の大きさや、ファンドの売出しのみで資金調達がない点などが不安視されていましたが、株価は4営業日目の本日初めて前日比マイナスとなったものの、IPO価格1,840円からの上昇率は約40%上場日初値2,116円からの上昇率でも約20%に達しています(10/30現在)。

この堅調な株価形成の材料については、10月24日の拙ブログでも考察しましたが、その中でも改めて注目すべきは、超大手機関投資家による巨額購入コミットメントの存在でしょう。

Capital Research and Management
(キャピタル・リサーチ・アンド・マネジメント、以下「キャピタル」と称します)

KOKUSAI ELECTRIC IPOでは、キャピタルが19,319,000株(IPO価格1,840円で約355億円)という巨額の購入を約束していました。
キャピタルという投資家、一般の方々においては大量保有報告でたまに名前を見るな、くらいの印象かもしれませんが、業界では非常に名の知れた超優良投資家です。

                     出所:2021年末データに基づくWTW社調査

運用資産額2.7兆ドル(1ドル150円換算で405兆円)でランキング7位に顔を出しています。
上記トップ10にはパッシブ運用(ファンドマネージャーの主観が入らない運用)の投資家も複数含まれていますので、ファンドマネージャーがその手腕を競うアクティブ投資家としては、世界有数の規模を誇ることがお分かりいただけると思います。

空売りをせず、買い持ちのみの運用スタイルを持つ投資家を「ロングオンリー」と呼びますが、キャピタルは特定の銘柄に多額の集中投資を行い、長期的に保有する傾向が強いことから「”ド” ロング」などと呼ばれたりもします。
ちなみにキャピタルが一番保有している銘柄はマイクロソフト(Ticker: MSFT)なのですが、その額なんと250億ドル(今年6月末時点)、円換算でざっと3.7兆円(!)という恐るべき規模になります。

                             出所:23年6月末13FよりHoldings Channel社作成

キャピタルの日本株投資ですが、ざっと調べてみたところ投資額が大きいのは

味の素(2802)27,130,490株、1,465億円
三井物産(8031)26,339,200株、1,415億円


といった銘柄でした。
一般的な海外機関投資家の日本株保有状況を調べると、日本株で一番時価総額の大きいトヨタ自動車(7203)が保有額上位で出てくることが多いです。日本株に投資をするならまずは一番大きい銘柄から、というシンプルな発想からくるわけなのですが、キャピタルの保有上位がトヨタではなく味の素や三井物産であることは、彼らが独自性の強い銘柄選定を行っていることの証左とも言えます。

                                                       出所:Capital Group HP

KOKUSAI ELECTRICのIPOからは、「日本株」「大型IPO」「キャピタルが投資」というキーワード3つが浮上するわけですが、このキーワードに合致する銘柄がもうひとつあります。
ソシオネクスト(東証プライム:6526)です。

ソシオネクストは資金吸収額700億円を超える大型IPOとして、昨年2022年10月12日に上場しました。
上場後、順調に株価水準を切り上げる中、上場から約3か月後の今年1月にキャピタルが大量保有報告書を提出し、保有比率5%を超える大株主に浮上。その後いったんの利食いを挟みながら、今年7月には再び5%超の保有を報告。その後はじわじわと買い増しし、今年10月13日現在で7.2%、256万株保有まで膨らんでいます。

                                             (拡大してご覧下さい)

ソシオネクストの上場来チャートにキャピタルの大量保有報告書データを入れ込んでみましたが、2023年初までに築いたポジションで大きな含み益を確保しつつ、その後の安値局面で少しずつ買い増ししていることが読み取れます。
ソシオネクストは、昨年度IPO銘柄の中でも中長期投資に資する好調なパフォーマンスを維持している数少ない銘柄ですが、その背景にはキャピタルのような超大手ロングオンリー投資家が介在していると言ってよいでしょう。

キャピタルがKOKUSAI ELECTRICに実際にどれだけ投資しているのかは現状明かされていませんが、購入をコミットした株数19,319,000株は、同社の発行済株式総数の5%を優に超える8.34%に相当します。
今後、高い確率で出てくるだろうと予想される大量保有報告書の内容は、KOKUSAI ELECTRICが我々一般投資家の中長期投資に値する銘柄であるかどうかの大きな判断材料になるのではないでしょうか。

ちなみにソシオネクスト(6526)とKOKUSAI ELECTRIC(6525)を並べてみると、何かに気が付きませんでしょうか?
そう、両銘柄の銘柄コードは、わずか1つ違いなのです(!)
何の因果か分かりませんが、両銘柄の関連性を身勝手に想像してしまう今日この頃でございました。

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